『しゅまり』について

2003年に北海道の奨励品種に採用されるとともに、農林水産省の新品種として認定され「しゅまり」と命名登録されました。当時北海道では「エリモショウズ」が小豆栽培面積の7割を占めていましたが、土壌病害に対して抵抗性がなく、病害が発生した年は大きく減収してしまい農家の作付意欲がなくなる恐れがあるため、病害に対する抵抗性の持つ品種の開発が急がれていました。そのような中「しゅまり」が3土壌病害に抵抗性を併せ持つ初の品種として登場しました。

その後道内各地で作付けが行われましたが、耐冷性が弱く、生育管理もデリケートで大変なため、現在は作付面積は減少しています。しかし加工適性では「エリモショウズ」よりも餡色が良好(赤紫系)で風味が強いと高く評価されています。JAびえい豆作生産部会では近年希少になってしまった「しゅまり」の栽培を推進しています。

『オール美瑛』

美瑛産「しゅまり」は町内の採種保圃場で育成された豆種(たね)を使用し、町内の農家で作付け栽培され、美瑛町農協の施設で調整・保管しています。種から製品の保管まで一貫して全て美瑛町内で行われているため、美瑛産「しゅまり」は門外不出の「オール美瑛」と言えます。

採種とは植物の種子(たね)を採ることで、とくに農作物の種子の良否は、生産を大きく左右します。優良種子の生産、すなわち採種には特別な配慮が払われています。主要農作物については、一般に公共研究機関や民間の育種場で新品種がつくり出されると、育成者はその新品種の特性を変化させないように、また形質・純度の維持に努め毎年責任をもって栽培し保存します。この種子を原原種といい、これを増殖した種子を原種といいます。原種はさらに特定の農家に採種栽培を委託し増殖して後、その種子を一般農家に販売するのが普通です。

美瑛産「しゅまり」では原種、採種の栽培を町内の農家に委託し、品種固有の特性や形質・純度の維持に努めています。原種、採種の収穫後は町内にある調整工場(上川生産連)に運ばれ、調整・保管されます。町内の生産農家はその「しゅまり」の種子を購入し栽培します。収穫後、美瑛町農協の集出荷施設に出荷し、調整工場で一定品質に調整され、低温倉庫で保管されます。

「しゅまり」の品種特性

「しゅまり」は、北海道立十勝農業試験場で、アズキ茎疫病抵抗性「十系494号」を母、アズキ落葉病、萎凋病抵抗性「十系486号」を父として人工交配した雑種後代から育成されました。それぞれ系統の耐病性母本「浦佐(島根)」、「黒小豆(岡山)」は本州から導入された晩成品種で、両系統の母親はともに「エリモショウズ」です。「エリモショウズ」並みの優良形質を持ち、耐病性のある品種を目標に開発されました。

北海道での栽培において重要な特性として耐冷性がありますが、「しゅまり」は開発時から開花期頃の低温抵抗性は「エリモショウズ」より弱いとされ、栽培適地は美瑛町のある道北、道央、道南、及び十勝の一部となっています。小豆の一大産地である十勝では平成9年8月中旬の極低温・少照により耐冷性の弱さの特徴が顕著に表れ大きく減収になり、それ以来「しゅまり」の作付けは減っています。

「しゅまり」は、重要な土壌病害であるアズキ落葉病、茎疫病、萎凋病抵抗性の3つを同時に合わせ持つ初めての品種です。生育では成熟期は中の早、倒伏抵抗性はやや強、子実収量は中となっており、「エリモショウズ」と比較して、主茎長が長いこと、落葉病及び茎疫病の抵抗性が強いこと等で、「きたのおとめ」と比較して、主茎長が長いこと、茎疫病の抵抗性が強いこと等で区別性が認められます。

上記で記したように「しゅまり」は主茎長が長くつる性の特性を持つため、施肥量が多いと過繁茂になり、逆に少ないと主茎長が短く、どちらも機械での収穫に困難を極めます。美瑛の畑は全般的に痩せていて、地区によって土質も異なり、各農家の各畑によっても地力が違うため、施肥の管理は細かく設定し、細心の注意が必要です。他品種の中には、一定以上の施肥をすることで高収量になり、過繁茂になりずらく、管理・収穫が比較的楽な品種があり、全道的にこれらの作付面積は増え、「しゅまり」の作付けは減少しています。

製餡適性

「しゅまり」は製餡適性に優れており、薄紫、または砂糖の加減により赤紫色の鮮やかな餡色が特徴的です。子実は小ぶりで皮が薄く、粒あんでも良好な食味があり、十勝に代表される品種「エリモショウズ」と同等以上の風味を持っています。

小豆の用途はほとんどが製餡の原料で、風味、餡色が重視されます。「しゅまり」は育成段階で5ヵ年にわたり製餡試験が実施され、その結果ほとんどの加工製品で「エリモショウズ」より餡色が良好(赤紫系)で風味が強いと高く評価されたというデータもあります。最近では「しゅまり」の鮮やかな餡色を活かし、洋菓子やスウィーツでの使用も多くなってきています。

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